外資系の年収の内訳は?ベース・インセンティブ・RSU・退職金なしの読み方
結論(先に3行で)
- 外資系のオファーの「年収」は、保証されるベース給与と、達成度や株価で変わる部分(インセンティブ・ボーナス・RSU)を足した額のことが多く、日系の「年収」と同じ意味とは限りません。
- RSU(譲渡制限付株式ユニット)は、決められた期間在籍すると株式を受け取れる仕組みで、途中で辞めると受け取れない分があります。権利確定(ベスティング)のスケジュールを必ず確認してください。
- 退職金がない会社では、その分をベース給与やRSUで上乗せしているかを確かめます。退職金は税の扱いが有利(退職所得控除)なので、同じ額でも受け取り方で手取りが変わります。
この記事でやること:オファーの年収を、ベース・変動・株式・退職金の4つに分けて書き出す → 下の確認の質問を採用担当に送る → 年収比較の計算で日系の提示と並べる。
オファーに書かれた年収には何が含まれる?
外資系企業のオファー(内定の条件の書面)には、次のような項目が並ぶことがあります。会社によって呼び方は違いますが、意味は似ています。
| 項目 | 意味 | 確かめること |
|---|---|---|
| ベース給与(Base Salary) | 毎月支払われる保証された給与 | 月額と支払回数、残業代の扱い |
| ターゲットボーナス(Target Bonus) | 会社と個人の達成度で支給額が変わる賞与 | 目標額、支給の時期、在籍条件 |
| インセンティブ(コミッション) | 営業などで売上の達成に応じて支払われる | 計算式、上限の有無、ターゲット年収(OTE) |
| サインオンボーナス | 入社時に一度だけ支払われる一時金 | 早期に退職した場合の返還条件 |
| RSU(株式報酬) | 一定期間在籍すると株式を受け取れる | 付与数・権利確定の時期・退職時の扱い |
| 退職金・年金 | 退職時に受け取る給付、確定拠出年金への拠出 | 制度の有無、会社の拠出額 |
「年収750万円」と書かれていても、ターゲットボーナスやインセンティブを100%達成した場合の額であることがあります。保証されるのはベース給与だけ、と考えて比べるのが安全です。
変動部分はどう読む?
変動部分は、会社の業績と個人の評価の両方で決まることが多く、達成率が100%を超えれば増え、下回れば減ります。職種によって比率は大きく違い、営業はインセンティブの比率が高い求人が多い傾向があります。営業職の詳しい読み方は外資系の営業に転職するには?にまとめています。
確認したいのは、目標の決め方(誰が、いつ決めるか)と、過去の支給の様子です。「昨年度、この職種の平均の達成率はどのくらいでしたか」と聞いて、答えられる範囲で教えてもらいましょう。答えにくい質問なので、エージェントを通して聞く方法もあります。
RSUとは?いつ受け取れる?
RSU(Restricted Stock Unit)は、会社(多くは海外の親会社)の株式を、決められた期間在籍したあとに受け取れる権利です。たとえば「4年間で毎年4分の1ずつ権利確定する」といったスケジュールが決められ、権利確定の前に退職すると、まだ確定していない分は受け取れないのが一般的です。
RSUの価値は株価で変わるので、オファーの時点の金額は目安にすぎません。税金については、権利確定のときに受け取った株式の時価が所得になる扱いが一般的ですが、どの所得に当たるか、勤務先の給与として源泉徴収されるか、確定申告が必要かは、制度の作り方で変わることがあります。勤務先の案内を確認し、分からない点は税務署や税理士に相談してください(ここまでの税の説明は一般論で、国税庁の資料で個別に裏付けたものではありません)。なお、外国の親会社から日本の役員・従業員に株式等の経済的利益が与えられた場合、勤務先の国内法人などがその内容を「外国親会社等が国内の役員等に供与等をした経済的利益に関する調書」で税務署に提出する仕組みがあります(所得税法第228条の3の2、国税庁)。
退職金がないと、どのくらい差が出る?
退職金は、日系企業でも制度がない会社があります(退職給付制度がある企業は74.9%、令和5年就労条件総合調査)。外資系でも、確定拠出年金への拠出など、別の形で用意する会社があります。
| 勤続年数 | 定年退職者1人平均の退職給付額(大学・大学院卒、管理・事務・技術職) | 参考:その年数の退職所得控除額(下限年で計算) |
|---|---|---|
| 勤続20年〜24年 | 1,021万円 | 800万円 |
| 勤続25年〜29年 | 1,559万円 | 1,150万円 |
| 勤続30年〜34年 | 1,891万円 | 1,500万円 |
| 勤続35年以上 | 2,037万円 | 1,850万円 |
出典:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」(退職給付制度がある企業は74.9%、勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者、令和4年1年間)、国税庁 タックスアンサー No.1420(控除額の計算式)。2026-11-03 確認。控除額は当サイトで計算。
退職金には退職所得控除があり、控除を引いた残りの2分の1だけが課税の対象です(国税庁 No.1420)。同じ金額を毎年の給与で受け取ると、給与所得として毎年課税されるので、手取りで見ると退職金のほうが有利になりやすい仕組みです。
当サイトの計算で、32歳・今の会社に勤続10年・日系600万円(退職金あり)と、外資750万円(据え置き、RSU年60万円、退職金代わりの拠出年30万円)を比べると次のようになります。
| 条件(60歳まで) | 日系に残る合計(定年時の退職金込み) | 外資に転職する合計(期待値・今の会社の退職金込み) | 差(外資−日系) | 差(外資の変動・RSUがゼロ) | 並ぶのに必要な上乗せ |
|---|---|---|---|---|---|
| 外資は据え置きだが、RSU年60万円+退職金代わりの拠出(DC等)年30万円 | 23,909万円 | 23,984万円 | +75万円 | −5,805万円 | +24.6% |
| 同上で、外資の年収が60歳まで据え置き(昇給なし) | 23,909万円 | 21,464万円 | −2,445万円 | −6,645万円 | +39.6% |
当サイトの年収比較の計算(Python と JavaScript で同じ計算をし、一致を確認済み)で出した額面の合計です。日系の賞与比率15%、退職金は「令和5年就労条件総合調査」の定年退職者の勤続年数別の平均(勤続20年未満は比例の仮定、自己都合退職の減額はしていない)を、日系に残る場合は今の会社での勤続年数+60歳までの年数、外資に転職する場合は今の会社での勤続年数(今辞めるときに受け取る)で当てはめ、伸び方の「統計カーブ」は「令和7年賃金構造基本統計調査」大学卒・男女計。外資の変動比率20%・達成率・伸び・RSU・拠出は仮定。税・社会保険料は引いていません。
RSUと拠出があると、昇給がない前提でも日系とほぼ並びます。ただしRSUは株価と在籍に左右され、変動部分とRSUがゼロの年が続く下振れの場合は、日系を大きく下回ります。前提を変えた比較は外資系と日系の年収比較で詳しく見られます。
労働条件通知書で何を確かめる?
労働基準法第15条により、会社は労働条件を明示しなければなりません。2024年4月からは、就業場所・業務の「変更の範囲」も明示事項に加わりました。外資系では、英語のオファーレターと、日本の労働条件通知書(または雇用契約書)の両方を受け取ることがあります。内容が食い違っていないか、次の点を確認してください。
- 賃金の内訳(ベース給与・手当・固定残業代の有無と時間数)
- 賞与・インセンティブの支給条件(在籍条件を含む)
- 退職金・企業年金の有無
- 労働時間の制度(通常の労働時間制、裁量労働制、管理監督者など)
- 試用期間の長さと条件
- 業務と就業場所の変更の範囲
条件の交渉の進め方は、姉妹サイトのハイクラス転職の年収交渉で、内訳の確認から書面での確認までまとめています。外資系の評価の仕組みは外資系の評価制度はどう違う?を見てください。
手当や福利厚生はどう比べる?
日系企業の年収には、家族手当・住宅手当などの手当が含まれていることがあります。外資系の提示が「年俸」で示されている場合、手当がその中に含まれているのか、別にあるのかを確かめてください。手当の有無や額は会社によって違います。
福利厚生(健康保険の付加給付、社員食堂、資格取得の支援、研修など)は年収に表れませんが、生活にかかる費用に影響します。比べるときは、年収の額だけでなく、次の項目を書き出しておくと見落としを防げます。
- 手当(家族・住宅・通勤など)の有無と額
- 退職金・企業年金・確定拠出年金の会社の拠出
- 休暇(有給休暇の日数、特別休暇)
- 在宅勤務の可否と、その手当
- 研修・資格取得の支援
残業代はどう扱われる?
外資系の提示が「年俸」の場合でも、労働基準法上の管理監督者などに当たらない限り、時間外労働の割増賃金の扱いは確かめる必要があります。年俸に固定残業代が含まれている場合は、何時間分がいくらかが明示されているかを確認してください。管理監督者は、労働基準法第41条により労働時間などの規定の適用が除外されますが、役職名だけで決まるわけではありません。オファーの段階で、労働時間の制度を確かめておきましょう。
年収の交渉では、どの項目を動かしやすい?
オファーの条件を交渉するときは、年収の総額だけでなく、どの項目なら会社が動かしやすいかを考えると話が進みやすくなります。ベース給与は社内の等級の範囲で決まっていることが多く、サインオンボーナスやRSUの付与数のほうが調整しやすい会社もあります。今の会社を辞めることで受け取れなくなる賞与や株式報酬がある場合は、その額を根拠として示す方法があります。交渉は感情ではなく、内訳と根拠を書面でやり取りするのが基本です。
まとめ:外資系のオファーを受け取ったら何をする?
年収を、保証されるベース給与・変動部分・株式報酬・退職金の4つに分けて書き出し、英語のオファーレターと日本の労働条件通知書の内容が一致しているかを確かめてください。分からない項目は、採用担当かエージェントに質問してかまいません。そのうえで年収比較の計算に入れ、昇給と変動の前提を変えながら、日系の提示と並べて判断します。
よくある質問
- ターゲットボーナスは必ずもらえる?
- 必ずではありません。会社と個人の達成度で支給額が変わるのが一般的で、在籍条件(支給日に在籍していることなど)がある場合もあります。書面で条件を確認してください。
- RSUは転職するとどうなる?
- 権利確定の前に退職すると、まだ確定していない分は受け取れないのが一般的です。転職の時期を決めるときは、次の権利確定の日を確認しておくと損を減らせます。
- サインオンボーナスは返さないといけないことがある?
- 早期に退職した場合の返還条件が決められていることがあります。金額だけでなく、返還の条件を書面で確認してください。
- 英語のオファーレターしかもらえないときは?
- 労働条件の明示は労働基準法上の会社の義務です。日本語の労働条件通知書がほしい場合は、依頼してかまいません。英語の書面の内容が分かりにくい点は、採用担当に質問して確認してください。
出典・確認したページ
- 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」退職給付(一時金・年金)の支給実態:退職給付制度がある企業74.9%。大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の定年退職者1人平均の退職給付額1,896万円(勤続20〜24年1,021万円、25〜29年1,559万円、30〜34年1,891万円、35年以上2,037万円、第23表)。退職事由別の1人平均は定年1,896万円・会社都合1,738万円・自己都合1,441万円・早期優遇2,266万円(第22表)。勤続20年以上かつ45歳以上の退職者、令和4年1年間(2026-11-03確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」:(収入金額−退職所得控除額)×1/2。控除額は勤続20年以下 40万円×年数(80万円未満は80万円)、20年超 800万円+70万円×(年数−20年)。短期退職手当等(勤続5年以下)の扱い。令和8年4月1日現在法令(2026-11-03確認)
- 国税庁「外国親会社等が国内の役員等に供与等をした経済的利益に関する調書(同合計表)」:外国親会社等から経済的利益の供与等を受けた役員等が勤務する内国法人等が提出(所得税法第228条の3の2)。記載要領に権利の種類の例として「制限株式ユニット」。所得区分・課税時期の記載はなし(2026-11-03確認)
- e-Gov法令検索「労働基準法」:第15条(労働条件の明示)、第41条(管理監督者等の労働時間等に関する規定の適用除外)(2026-11-03(e-Gov 法令APIで条文を確認))
- 厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」:就業場所・業務の変更の範囲などの明示事項の追加(2026-11-02(姉妹サイトで確認))
- 国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」調査結果の概要:1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与4,866千円(給料・手当4,118千円、賞与749千円)、平均年齢47.3歳・平均勤続12.5年。資本金10億円以上の株式会社の平均給与6,917千円、1億円以上10億円未満5,086千円、事業所規模1,000〜4,999人5,562千円・5,000人以上5,475千円(2026-11-03確認)
この記事は 2026-11-03 時点で公的機関・各社公式ページを確認して書いています。制度・統計・各社の条件は変わることがあるため、申込み前に公式ページで最新情報を確認してください。体験談・口コミ・内定実績は掲載していません。文中の例は書き方を示すための架空の設定です。